エブリディ・マジック-日だまりに猫と戯れ

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猫による救いと哀切-『猫の帰還』ロバート・ウェストール

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春の嵐つづき

気候定まらずのなか

馥郁たる香り

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斑入り沈丁花の花がほころんできた

 

 

 

猫もの、児童文学を選んで読んでいた頃知りました。

見つけたのは、図書館の児童書コーナーの本棚

いずれにせよ、優れた作品というのは

読み応えがあり、読後の余韻も響いています。

これもそうした一冊。

 

第二次世界大戦下のイギリスで、

疎開先から、出征した飼い主を探して

黒猫ロード・ゴートの長い旅は始まります。


行く先々で様々な出会いがあり、

新たな飼い主たちとの束の間のふれあい、

別れを重ねて旅を続けるのですが、

緊迫した情勢の中で、

それぞれの人々の心と生活に希望と救いを灯し、

確かな足跡を残していきます。


児童文学の定石というか、

結局は、邦題タイトルのとおり、

飼い主の元に、やがて戻る猫の物語なのですが

淡々と描かれるがゆえに、リアルで

長い深い道中での出会いと別れのひとつひとつが、

とても心に強く響く傑作だと思います。

 

猫の帰還

猫の帰還

 

 

ところで、この原題は “Blitzcat” で、

`blitz’には「ロンドン空襲」や「電撃」等の意味合いがある。

 

作者のロバート・ウェスト―ル(Robert Westall 1929ー1993)は

イギリスの戦争文学の第一人者といわれ、『海辺の王国』など

他にも心に残る作品をいろいろ書いています。

 

海辺の王国

海辺の王国

 

 

また、これまで、私は知らなかったのですが、

宮崎駿監督が、ウェストールの作品に惚れ込んで、故郷を訪ね、

そのオマージュ作品も載せて、編纂されたものもあります。

 

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

 

 

猫と出会って救われる人々の姿にはほっとする、

その一方で、戦争というものが、いかに人間の心を蝕んでしまうか

といった、やり切れない哀切さが漂う。

 

先の物語の最後のくだりは

「夢の中で、ロード・ゴートはねずみを追っている。

        どこの国のねずみでもかまわなかった。」

 

もとより、国とか人種とか、そんな違いは猫には関係ないことだが、

確かに、そうした違い以前に、私たちは、皆、同じ人間なのである。

 

そして、何より、自由で、安心して眠れて、

充分に食べることが出来、愛する人の傍らにいられること、

猫が望むものはシンプルだが、人間だってそれが基本なのだ。

 

児童書ということで、スルーするにはあまりにも惜しい、

大人にこそ、一読をお薦めしたい気がします。

 

 

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