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自然と共に働く道-『土・牛・微生物 文明の衰退を食い止める土の話』デイビッド・モントゴメリー

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新刊コーナーで目に留まった一冊。

 

土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話

土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話

 

 

ワシントン大学地形学教授である著者は、地質学者。

アメリカ全土、および世界各地を飛びまわって

不耕起栽培を実践する農家を取材し、科学的知見を加え、

土壌を回復させることによるこれからの農業について、

環境保全型農業への革命的な方法論が語られていきます。

 

原題は、“Growing a Revolution   Bringing Our Soil Back to Life”

邦題にある「土・牛・微生物」という語は

いわば土壌を再生させるためのキーワードともいえるもので

その前提は、「不耕起」栽培、そう耕さない農業ということ。

慣行農業の犂と耕作機をもって、田畑は耕すものという

固定観念を打ち破る農業革命ともいえるわけです。

 

 

その新たな道、

環境保全型農業は次のシンプルな三原則に成り立ちます。

 

①土壌の攪乱を最小限にする。

②被覆作物を栽培するか作物残渣を残して土壌が常に覆われているようにする。

③多様な作物を輪作する。

 

――われわれは、有益な土壌生物に対してもっと害の少ない農法を必要としていることだ。土壌の健康は、ありふれたミミズから特殊化した細菌、菌根菌、その他の微生物まで、土壌生物の上に成り立っているからだ。本質的にはこれが環境保全型農業のすべてだ――作物の成長を助け、土壌肥沃度を維持するために役立つことがわかっている多くの小さな生物を活性化させ、守るような農法だ。

 犂(すき)にあえて疑問を唱えるのは異端のように思われるかもしれないが、それを使うことは確実にメジャーリーグ級の土壌攪乱なのだ。だから不耕起への移行が環境保全型農業の中心にある。不耕起栽培は収穫できない作物部位――作物残滓――を土壌の覆いとして残す。これは、作物が収穫されたあと、トウモロコシの茎にしろコムギの茎にしろ、植物の残骸を取り除いたり焼いたりしないということだ。そうしたものは畑で分解し、地面に有機物のカーペット――マルチ――を作る。土壌微生物のバイオマスは、不耕起農法へ転換するとすぐに増加する。土壌動物相も同様だ。マルチを施した区画には細菌、菌類、ミミズ、線虫の個体数が多くなる。一方、ひんぱんに耕すと土壌生物のバイオマスが減少し、リンを植物に運ぶのを助ける菌根菌糸を阻害するなど悪影響がある。 

 

 

実際、これらの革命的ともいえる移行は

近代、奨励されてきた化学薬品と除草剤を使う繰り返しによって

よけいに土壌を疲弊させるだけという事実に気づいた

個人規模の農業現場で試され、成果をあげ、

草の根的に静かに広まりつつあるといいます。

土にたい肥など有機物を返し、被覆作物を植えることで

土壌にマルチを施し、雑草を抑制し

何より、土壌の微生物に有効に働いてもらう。

また牛を上手く放牧し、草を食べ、糞が土に戻りという

自然な農法が今となっては新しく環境保全の契機ともなりえるのです。

 

 有機物を使って肥沃な土を作る実証済みのやり方を私たちは再発見した。それは自然と共に働くという忘れかけた道へと、私たちを導くものだった。非常に驚いたことに、古代社会を崩壊させた土壌の劣化の逆転がまさに自宅の裏庭で進んでいたのだ。そしてそれは思った以上に急速に起きていた。都市部にあるわが家の土壌が変わっていくのをこの目で見た私は、土壌生物が土壌肥沃度を高めるための要であるだけでなく、それを使えば土壌を自然が行なうよりもっと速く回復させられることを確信した。これは私が大学で学んだこととは違っていた。

 

それは、教授(著者)が移り住んだシアトルで、

妻のアンが荒れ果てミミズもいない庭の花壇を

まるで農場のミニチュア版のように再生させたことに始まります。

 

――新しい花壇の土壌改良に使うマルチ(乾燥や侵食、雑草の発生を防ぐため、土壌の表面を被覆する資材。マルチング)と堆肥を作るため、アンがありとあらゆる有機物を家に運んでくるのに、私は辛抱強く耐えた。――数年後、結果が見え始めた。土の色がカーキ色からチョコレート色になるにつれて、ミミズ、ヤスデ、クモ、甲虫などの生命が地中からわくように現れた。花粉媒介昆虫や鳥が続いて姿を見せた。生命の叫びが私たちの足元から現われ、地上に広がり、私たちの庭と世界を見る目を変えた。

 

  

 

さて、規模を広げ、世界に目を移したとき

将来的にも持続可能な農業を目指すには、

土の肥沃度を増し、質のよい収穫量をあげ

農場の採算を改善する必要が求められます。

それは、これまでの慣行農法、つまり

工業化され化学製品を多用することから

離れることでなされたという体験談が

各地で語られているのです。

化学製品が世界が養うのは神話だといいます。

 

更に地球上には、現在の食料事情を考えて、

全ての人に食料を与え世界の健康を改善するという問題が

横たわり、そこで欠かせないのは、収穫量を増やすだけでなく

食品廃棄を減らすという広い視野も必要となります。

作物全体の30~40パーセントもが、農薬の大量使用にもかかわらず

害虫と病気によって失われているというのです。

 

また遺伝子組み換え作物が招いているいたちっご

(目先の利益と予想もしない問題発生)にも

気付かなければなりません。

 

 農家の短期的な利益と社会の長期的なニーズをどうすれば一致させられるだろう? それには伝統的な知識を、新しい農業システムを特徴づける現代の慣行に合わせてアップデートすることだ。そうするためには、私たちは土にかかわるもう一つの神話――土壌有機物は植物の養分ではない――を再考する必要がある。直接的には、もちろん、そのとおりだ。植物は炭素を光合成によって大気中から得る。だが、有機物は間接的に土壌生物の餌となり、周知のとおりそれは、植物の栄養と健康に重要な役割を果たす。奇妙なことだが、生命を土に取り戻す可能背は、私たちが死んだものと目に見えないもの――有機物と微生物――をどう見るかにかかっているのだ。

 

ところで、環境保全型農業と再生可能な農法を広く奨励する

政策的支援がなぜないのか、

これを問うと様々な噂が農家から聞かれます。

最大の障害は、アグリビジネス(農業に関連する経済活動)の

ロビイストの存在だといいます。

 

議会と監督省庁に影響を与える大規模な業界までの「金の流れを追え」というような答えが、たいてい返ってきた。変化の最大の妨げと考えるもの――既得権を守る政府の計画と、政策を左右する企業の利益――を指摘することに躊躇する者はほとんどいなかった。

 

どうやら、古今東西

新しいやり方へ移行するのを阻害している根本原因は

同じようですね。でも時代は確実に変わっています。

常に個人や小さなところから

草の根的にも新しい動きは始まっているという

明るい展望を忘れないでいたいものです。

 

 そう、私たちには世界を変え、太古からの物語に新しい結末を書くことができる。肥沃な土壌は、農業のやり方によって失われたり生まれたりするからだ。humus(腐植)とhuman(人間)が同じラテン語の語根を持つのは、いかにもふさわしいことだと思う。世界の農地に健康な土壌を取り戻すことは、人類の未来への投資として本当に有意義なことだからだ。だから世界に食糧を供給し、温暖化を防ぎ、失われる自然を押し留めるという手ごわい問題に立ち向かうとき、シンプルな事実を見失わないようにしよう。探している答えは、時に思ったより身近にあるものだ――私たちの足元に。

 

 

 

 

この著作は、実は三部作の最終巻にあたるということでした。

前の二冊も興味深い内容に感じます。読んでみたいな。

 

『土の文明史』 

 

 

『土と内臓(微生物がつくる世界)』

 

 

 

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