今年の春先の数カ月、思いがけず、久しぶりにビデオ(レンタル)を見る
という愉しみが復活したことがあった。
我が家は、かなり以前に、テレビを見なくなって処分したので、
ドラマや映画を見ることも久方ぶりで、結構、新鮮な感じだった。
そこで、たまたま『ダウントン・アビー』にハマったところから、
久々に、イギリスものへの興味も復活したのであった。
今回は、上記のドラマの話でないので、割愛するが、公式サイトはこちら
そして、イギリスといえば、やはり、
ジェーン・オースティン(Jane Austen 1775-1817)である。
ビデオも面白かったが、本もまた読み直したり、新たに読んだり。
ジェーン・オースティンの代表作といえば、
『自負(高慢)と偏見』 (”Pride and Prejudice”)だ。
サマセット・モームが『世界十大小説』に選んでいる。もっとも、
シャーロッテ・ブロンテや、D・H・ロレンスなどは批判的だったそうだが。
今風に言えば、19世紀初頭の英国の婚活物語とでもなるのだろうが、
当時の女性は、結婚することでしか、自立の道が開かれていなかったわけで、
それは一大事であったであろう。
そこでは、ジェーンとエリザベスというベネット姉妹それぞれが、
結婚に至るまでの紆余曲折が描かれている。
この物語の書出しの文は、実にうまいもので、夏目漱石も激賞されたといわれる。
独りもので、金があるといえば、あとはきっと細君をほしがっているにちがいない、というのが、世間一般のいわば公認真理といってもよい。
はじめて近所へ引っ越してきたばかりで、かんじんの男の気持や考えは、まるっきりわからなくとも、この真理だけは、近所近辺どこの家でも、ちゃんときまった事実のようになっていて、いずれは当然、家のどの娘かのものと、決めてかかっているのである。
「ねえ、あなた、お聞きになって?」と、ある日ミセス・ベネットが切り出した。「とうとうネザフィールド・パークの御邸に、借り手がついたそうですってね」 (中野好夫訳)
It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife.
However little known the feelings or views of such a man may be on his first entering a neighbourhood, this truth is so well fixed in the minds of the surrounding families, that he is considered as the rightful property of some one or other of their daughters.
"My dear Mr. Bennet," said his lady to him one day, "have you heard that Netherfield Park is let at last?"
さて、今回、読み直して、特に印象に残ったのは、
主人公のリジー(エリザベス)が、めでたくミスター・ダーシーと結ばれるかと
いった結末でなく、その直前の、ダーシーの叔母にあたるキャサリン(伯爵)夫人と
のやりとりの場面での台詞であった。
キャサリン夫人は、甥のダーシーと自分の娘を結婚させるつもりであったため
(ダーシーがエリザベスに好意を持ったと知り)半ば強引に身を引くよう、
迫ったわけだが、リジーはひるまない。
「じゃ、どうしてもあの子を、ものにしてみせるとおっしゃるのね?」
「そんなことは、ちっとも申してませんわ。ただ申し上げてますことはね。わたくしは、わたくしの考えで、こうすれば自分の幸福になると思うそのやり方で、一切やっていくつもりだという、それだけですの。そんな奥様や、また自分とはなんの関係もない人間のことなど、なんにも考えませんでね」
※太字は筆者(私)
”You are then resolved to have him?"
”I have said no such thing. I am only resolved to act in that manner, which will, in my own opinion, constitute my happiness, without reference to you, or to any person so wholly unconnected with me."
そして、また、ダーシーの面目をふみつぶすのかと怒るキャサリン夫人に返す。
「ええ、義理だか、対面だか、恩義だか、知りませんが、とにかくこの場合、わたくしはなんとも思いませんわ。かりにわたくしが、ダーシーさんと結婚したところで、別にそれが、義理を欠いたり、恩義に反した行動だなどとは、ちっとも思いませんわ。身内の方がお怒りになるとか、世間がゆるさぬとか、おっしゃいましたが、もしわたくしと結婚したからといって、お怒りになるのなら、そんなこと、わたくしは、これっぽちも問題にはしませんし――それに、世間なんておっしゃいますけどもね、これは案外賢明で、ちっとも笑ったりなどいたしませんわよ」
この毅然とした自己主張、当時の女性としては、かなり近代的だったのではないかと
思ってしまう。しかも、現代でも、何だか、胸のすくような感じさえする。
自分を尊重(優先)する、というテーマを持つ?私としては、
新年度に向けて、これは書き留めておかなくてはと思った次第ですね(笑)
人気だったBBCのドラマは、実によく出来ていて面白いが、
文学に興味のある方は、やはり原作を読まれると楽しめると思う。
(翻訳は、以前は中野好夫さんの名訳があったが、今はいろいろ出ている)
人物と心理描写が細かく、見事な写実的手法で、狭い社会に見えても
なんだかんだと普遍的な真理をついていて、読み応えがあるのが、
ジェーン・オースティンなのだ。
風刺とユーモアが流れているのもイギリスらしい。
- 作者: J.オースティン,Jane Austen,中野好夫
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Pride and Prejudice (Penguin Classics)
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評判となったBBCドラマ 面白い
コリン・ファース、ジェニファー・イーリー サイモン・ラングトン監督
原作に忠実というわけでないが、映像が綺麗な映画
キーラ・ナイトレイ、マシュー・マクファーデン ジョー・ライト監督
もちろん、英俳優コリン・ファースを一躍スターにしたBBCの5時間ドラマも
よく出来ていて面白いし、ドラマに比べると時間制約のある映画
『プライドと偏見』の出来も悪くない。どちらの映像もとても素適だ。
配役については(はまり役のコリン以外は)人それぞれ、
ツッコミどころもあるだろうが、それもまた一興だ。
最近、パート3が公開された『ブリジット・ジョーンズ』も、もともと『自負と偏見』
の人物を模しており、他にも、『高慢と偏見とゾンビ』なんてパロディ作もあって、
オースティンの小説は娯楽性でも、不滅であるようだ。
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