スポンサーリンク
書棚にあった
「想定外を生きる」という
副タイトル?が目に留まって読み始めた一冊。
本の帯にも、内容にもあるが「懺悔録」ともいう。
著者は、京大の 教授であり、
火山が専門の地球科学者の鎌田浩毅氏だ。
若い頃から、ビジネス書を多く読み、
ご自身でも、理系的発想に基づく多くのビジネス書を著してきた。
科学の本質も、ビジネス書の根本にあるのも
「予測」と「制御」だそうだ。
しかし、科学者としても
2011年の東日本大震災をはじめ、
2014年の御岳山の噴火など
近年起こった想定外の出来事を通じて
大きな衝撃を受けたといいます。
仕事、人生をすべて計画してコントロールできると考えるのは、人間のおごりではないだろうか。むしろ、仕事や人生の“揺れ”を認めて、時には折れながらも、うまくつきあっていった方がよいのではないか。
そうした問いが、私の中で日に日に大きくなってきました。
本書では、あらゆるものが変動し、不確かなこの時代を
幸福に生きるための道しるべを述べたいと思ったそうです。
これまでのビジネス書などの
「未来はコントロールできる」の限界を知り、
またヒッピームーブメントなどの極端な自然回帰でもない
“第三の生き方=道”について言及します。
具体的に言えば、想定外のことが起きることを前提として「ゆるい計画主義」のようなものが求められると思います。
著者が注目したのは、スタンフォード大学の
ジョン・D ・クランボルツ教授が提唱している
一種の「キャリア論」である
「プランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)」理論。
従来のキャリア理論は、キャリアのゴールをまず定めて、そこに到達できるようにキャリを積み上げていく計画主義的な考え方が中心でした。
しかし、人生には予測不可能なことがつきもので、何が起こるか分かりません。ときには偶発的な出来事によって道が拓けることもあります。
たとえば偶然出会った人と意気投合して新しいビジネスを始めたり、たまたま割り当てられた仕事がおもしろくて自分の適性を見出したり、こうした偶発性を積極的に人生をよりよいものにしていこう、というのが、プランド・ハップンスタンスの基本的な考え方です。
これまでの計画主義では、偶発性をマイナス要因ととらえがちで
たとえば、旅行の際に雨降りなどのリスクに備えて準備する。
しかし、雨だけでなく嵐かもしれないし、雹が降ってくるかも。
更に、可能性としては空から魚や蛙が降ってくるかもしれない、
というのも、2009年には
石川県でオタマジャクシが実際に降ってきたという。
さらに、火山学者の著者なら、火山灰すら考えられる。
そもそも可能性をすべて計画に組み込むのは無理な話なのだ。
一方、プランド・ハップンスタンスは、偶発性をマイナス要因としてとらえるのではなく、可能性を広げてくれる一つの「チャンス」としてとらえます。ですから、予想外のことが起きても、「当初の計画と違ったのでリカバリーしなくてはいけない」と計画に固執するのではなく、「こっちの方がおもしろそうだ」と考え、柔軟に対応します。
プランド・ハップンタンスは、偶発性に対してきわめて能動的です。
たとえば人生を変えるような幸運を見逃さないように周囲を観察したり、偶発的な出来事がたくさん起きるように自ら行動を起こしたりします。偶発的な出来事を起きるのを座して待つのでなく、自らチャンスをつくっていく。その意味で、「計画された偶発性」なのです。
庭の桜も満開
そして、迷ったときも、「流れで行ってみよう」というわけです。
では、ここで言う「流れ」とは何でしょうか。そのときどきの惰性や、まわりの風潮や同調圧力などは小さな流れです。
私が言う「流れ」とはもっと大きな流れ。「流れで行ってみよう」とは、何ものにもすがることなく、結論も急がず、この場でひととき宇宙の流れに従ってみよう、ということです。
もちろん、
小さい頃から計画主義的発想で育てられてきた
私たちの多くは、「偶発性を楽しむなんて…、
想定外のことが起きるのは不安だ」というのも分かるという。
実際、想定外のことで物事がうまくいかなくなるケースもある。
しかし、想定外のことを極端に恐れる必要はありません。想定外こそが、思わぬ恵みをもたらしてくれることもあるからです。
事実、地球も生物も「想定外」とともに進化してきたと言えるという。
規模は違うが、個人の人生も同じで、ピンチを経験することで
人として一回り大きくなることもある。
大切なのは、想定外をやみくもに排除しようとするのではなく、いったん「受け入れる」こと。
そのために、いかに偶然や偶発性を楽しむか、活かすかについて
述べられています。
スケジュールで埋めない。
どのようなことでもできるだけ積極的に経験すること。
いまあるものを使って生きる 。これは、生物が「ありあわせ」で
進化したことによるそうです。
原始生物と一緒にされてはたまらないという人もいるでしょう。しかし、私は人間が地球や生命の進化から学ぶべきことは多いと考えています。
実際、人間は生きるために必要なものをすでに身体の中に備えています。
このようになかなか示唆的な内容なのですが、
特にもう一つ、気に留まったのは
「人生をストックからフローへ」という4章でした。
地球科学者ゆえに、防災とエネルギーについてもふれています。
自然災害を封じ込めることは不可能であるし、
万全と思える対策でもいつかは予測を上回る災害は起きる。
これから必要なのは、「減災」の発想だという。
エネルギー問題と言うと、すぐに原子力発電は是か非かという話になりがちです。もちろん原発の安全性は重要なテーマであり、十分な議論が必要だと思います。
ただ、私は震災を通して、原発の是非以前のもっと根源的な問いを突きつけられた気がしています。それは、人類は大量のエネルギーを消費するいまの生活を続けていていいのか、という課題です。
化石燃料に依存しない発電技術の普及と同時に
“ライフスタイルを「ストックからフロー」に変えることが大切だと考えています。”
著者によれば、生物はもともとフローで生きていて、
いずれにしても現代のストックは明らかに過剰であるという。
いま世の中は「所有から利用」、つまり買うよりレンタルやシェアする時代に移ってきています。
何より、来たるべき自然災害に対して、「しなやかな社会」をつくる
必要があると説いています。
-私的ポイントメモー
・どう生きるかは身体に聞く
(気持ちが明るく、身体が軽くなる方を選ぶ)
・偶発性を楽しむ
・ひたすら、いま、ここを生きる
・いま持てるものを使ってベストを尽くす
・一つのことに縛られないしなやかな生き方
日常でも、思いがけないことや
時に非常事態なんかも起こります。
いずれにしても、
想定外を生きることは避けられない時代になっていると
つくづく感じています。
興味のある方には、一読をオススメしたい一冊です。
応援クリック↓↓よろしくね!
ご来訪ありがとうございます。