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図書館の新刊コーナーで目に留まった一冊です。
カバーの絵画は、アンリ・ルソーの《ピエール・ロティ》。
著者は、動物行動学者のデズモンド・モリス氏で、
それまでのキリスト教的の人間観や人間の優位性を排除し、
動物学的人間像について述べた『裸のサル』(角川文庫)の
ベストセラーで知られています。
この本を手に取って
パラパラ見ていて目についた
最初の “猫の美術史のはじまり”にあった
フランスの洞窟に描かれたという猫(らしきもの)の
絵から始まっていました。
さらに”Ⅰ聖なる猫(古代エジプト)”へと移り、
時代ごとに様々な絵画が紹介され、
絵や当時の文化の中での猫というものについての
説明と考察が繰り広げられていきます。
今日、猫は、地球上で飼われているペットのなかで抜群の人気を誇っています。野生を捨て、まず害獣駆除役として人間の家庭に入っていった猫ですが、最終的には人間の純粋な友となり、ぐんぐん数を増やしていきました。その数は今や億単位で数えるほどで、世界でも群を抜いて反映する肉食獣となりました。(中略)これだけ猫がいれば、多くの文化で猫が芸術の主要テーマの1つとなっても驚きません。これから見ていくように、古代エジプトから現代アートまで、猫は実に多種多様な姿で表現されてきました。
時代ごとの沢山の絵画やオブジェなどを
眺めているだけでも充分面白いうえ、
当時の社会や文化背景、また画家と猫の関わりについて
モリス氏の興味深い解説もたっぷりで
思った以上に
読みごたえもあって、楽しめました。
猫が家猫や狩りの友とされ、
女神(バステト)として崇められたエジプト時代から、
やがて12世紀以降になると、ネズミ退治や愛玩の対象から
次第に、反キリスト教の異教、悪魔の使いとして猫(特に黒猫)とされ、
残酷な迫害を受ける長い受難の時代が続きます。
18世紀に入って、ようやく飼い猫としての復権がなされ、
絵画の世界での変遷が語られるのです。
古典の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチがの
「ネコ科の最小動物こそ最高傑作だ」という言葉が
残っているそうで、彼の素描に猫が描かれたものが
ありましたが、未完に終わった作品として載っていました。
その後、当時はトラ猫が貴重とされていたり、
猫と画家たちの関わりとエピソードなど
興味深い内容は続きます。
ピカソが描く猫は、
獲物を残忍に食らっているものばかりだったとか…
(晩年にピカソらしいスタイルの抱かれた猫の絵もありましたが)
登場。パウロ・クレーやミロの抽象的な猫も面白い。
近代に入り、伝統主義や、ナイーブ・リアリスト、
ナイーブ・プリミティブなど紹介されています。
(マーティン・レーマン「船長の猫」)
また、”部族社会の猫”では、
南アメリカ現住部族の芸術品である見事な
古代からの衣装の文様(織物)などもあり、
そして東洋の猫たちも、
漫画やストリートアートまでと
実に多彩な猫の姿が楽しめます。
猫好きさんはもちろん、絵画や文化史に興味のある人には
オススメの一冊です。
巻末には作品のリストもあり、
お好みの絵画も見つかるかもしれませんね。
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