エブリディ・マジック-日だまりに猫と戯れ

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『ムーミン谷の十一月』-内向と深まりゆく季節に/ムーミン年賀状、新刊『ムーミン谷のすべて』

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11月に入りました。

 

子供も読めるが(児童書として)、大人になってから、読んでみて、

その面白さと深さ、実に読み応えのある内容に驚く本も結構あるもの。

前にも触れていますが、

トーベ・ヤンソンムーミンシリーズ(全9冊)の文庫もそう。

その最終巻という新装版『 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)』は、

そのムーミン一家は旅に出て留守という異色の設定。

 

新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

 

 

冬を前に、深まる秋の気配に促されるように、

ムーミン谷を訪れたお客たちが

それぞれのムーミン一家への想いを抱きつつ、

集って繰り広げる物語。

愉快で楽しい一家に会うのを期待していたのに、

その不在にがっかりしつつも、

かなり個性的な面々が、一時を共に暮らすことで、

それぞれと向き合い、

それなりの経験を経て、また戻っていく。

そうした姿がそれぞれ印象的で、

深い余韻を味わえる傑作だと思う。


このお客6名は、

おなじみのスナフキンミムラねえさんのほか、

フィリフヨンカ、ヘムレンさん、スクルッタおじさん、

そしてホムサ・トフト。

このちびっこホムサは、

とりわけ、ムーミンママへの思慕が強かった。

 

  

 

 スナフキンは、魔法びんを出して、ジョッキみたいな茶わん二つに、紅茶をいっぱいつぎました。

「そこに、おさとうがあるよ」と、スナフキンはいいました。
ムーミンたちは、いつかまた、帰ってくるよ」
「いつかだって!」と、ホムサは大声を出しました。
「いま、ムーミンママが帰ってこなくちゃいけないんだ。ぼくが会いたいのは、ママだけなんだ」
 スナフキンは、肩をすぼめました。パン二きれにバターをぬりながらいいました。
「ママのほうが会いたいのは、だれかしらね……」
 ホムサは 、それ以上、なにもいいませんでした。ホムサが帰るとき、スナフキンは、うしろからさけびました。
「あんまり、おおげさに考えすぎないようにしろよ。なんでも、大きくしすぎちゃ、だめだぜ」

 

その後、ホムサは、

“ちっともこわがらない人、人のことを心から心配してくれる人、

そうだ、ぼくは、ママがほしいんだ”と気づき、

ムーミンたちに会いたくてたまらない。

冬も近づき、次々と皆が戻っていき、

やがてスナフキンも旅立ち、谷に残ったホムサは、

ムーミンママが一人になりたいときに立ち入ると

聞いた裏山にはいってみる。

 

 ホムサ・トフトは、森の中を、奥へ奥へとはいって、いきました。なんにも考えないで、枝の下をからだをこごめてくぐりぬけたり、はったりしているうちに、頭の中が、あの水晶玉とおんなじようにからっぽになりました。そうだ、ムーミンママは、くたびれたり、はらがたったり、がっかりしたり、ひとりになりたいときには、あてもなく、はてしなくうす暗いこの森の中を歩きまわって、しょんぼりした気持ちをかみしめていたんだ……ホムサ・トフトには、まるっきり、いままでとちがったママが見えました。すると、それがいかにもママらしくて、自然に見えました。ホムサは、ふと、ママはなぜかなしくなったのだろう、なぐさめてあげるには、どうしたらいいのだろう、と思いました。

 

こうして期待でなく、

ありのままの姿を思いやれるようになったホムサ、

旅から戻ってくるムーミン一家を

迎えようとするであろうラストがまた、

秀逸で心あたたまります。

季節が移ろう自然描写もひときわ印象深く、

冬に向かう、晩秋にふと読み返してみたくなる

一冊でもあります。

 

 

 自己啓発本も好きなのですが(笑)

こうした素晴らしい文学の行間の響きと味わいは、

また格別の喜びではないでしょうか。

 

ちなみに、今季の

郵便局のコレクション年賀状に

ムーミンが登場していました。

 

print.shop.post.japanpost.jp

 

また、先月

ムーミン関連本も出版されています。

なかなか立派で豪華な感じの一冊で、

英国の児童文学作家がムーミンの世界について解説している

とのこと。 

 

 

 

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