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今日は曇りがちで、寒空が広がっていますが、
もうすぐ3月、春が来る。
大人になってから、初めて読んではまった、
面白いムーミンシリーズも、
それぞれの季節を移ろいながら、
読みごたえもあって楽しめます。
ムーミントロールは、わくわくしながら、むねを大きくはって、ムーミン谷を歩きまわりました。
もう春がきたのです。しかし、彼の考えていたのとは、まるっきりちがっていました。
彼は考えていたのです――春というものは、よそよそしい、いじのわるい世界から、自分をすくいだしてくれるものだと。ところが、いまそこにきているのは、彼が自分で手にいれて、自分のものにしたあたらしい経験の、ごく自然なつづきだったのではありませんか。
こちらは、本来は冬眠しているはずのムーミンが、
冬にふと眼を覚ましてしまい、
知らなかった冬の世界と不思議ないきものたちに出会う
『ムーミン谷の冬』からの一節です。
何しろ、雪が降ってくるものだと知らず、
冬眠中の家族に、孤独を感じつつ、新しい冒険へといざなわれ、
やがて、春を迎える傑作です。
「そうよ、あたいにゃ、かなしむってことはできないの。あたいは、よろこぶか、おこるだけ。あたいがかなしんだら、それがりすさんにとって、なにかの役にたつの。たちゃしません。ところが、あたいが氷姫のことではらをたてたら、あたいはいつか、足にくいついてやりますからね。」
ミイが、りすのための黒リボン(喪章)を
そっけなくことわったシーンのセリフ。
ちびのミイは、いまでもまた、スケートをしていました。(中略)
ときたまムーミントロールは、ミイが氷の上にえがいた8の字を見かけました。けれども、そのすがたを見ることは、めったにありませんでした。
彼女はいつでも、自分ひとりでたのしむことを知っていました。自分がなにを考えようと、春がどんなにすきであろうと、そのことを人に話す必要は、すこしも感じてなかったのです。
なるほど、人気者のミイは、
なかなか得難いキャラが際立っています。
「世の中って、ほんとにおもしろいものね。銀のおぼんのつかいかたは、一つきりだと、一生みんなが思ってきたんだわ。それなのに、ぜんぜんべつの、ずっといいつかいかたがあったのね。それからまた、みんながわたしに、『そんなにたくさんジャムをこしらえて、どうするの』なんていったけど――ちゃんと、全部なくなっちまったわね」
こちらは、風邪をひいてしまったムーミンのくしゃみで、
冬眠から覚めたムーミンママ。
ママが大事にしていた特別な銀のおぼんは、
ミイが、そりとして使っていたんですね(笑)
日差しがあると開いてくる
ところで、スノークのおじょうさんが、ことしはじめてでた、元気のいいクロッカスの芽を見つけました。(中略)
「この上にガラスをおいてあげましょう。夜中に寒くなってもだいじょうぶなように」「いや、そんなことだめさ。自分の力で、のびさせてやるのがいいんだよ。 この芽も、すこしはくるしいことにあうほうが、しっかりすると、ぼくは思うな」
こう、ムーミントロールはいいましたが、そのとききゅうに、とてもうれしくなって、なんだか、ひとりになりたくなりました。
人知れず、厳しい冬を乗り越え、新しい世界を知って、
たくましくなったムーミンの姿が感じられます。
物語の世界のように顕著な冒険でなくとも、
ちょっと今までの殻を破る、いや、
ほんの少し動いてみるなりしても
そこから新しい世界が広がることもありますね。
そして、いつでも新しい季節も巡ってくるのです。
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