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春の嵐つづき
気候定まらずのなか
馥郁たる香り
斑入り沈丁花の花がほころんできた
猫もの、児童文学を選んで読んでいた頃知りました。
見つけたのは、図書館の児童書コーナーの本棚
いずれにせよ、優れた作品というのは
読み応えがあり、読後の余韻も響いています。
これもそうした一冊。
第二次世界大戦下のイギリスで、
疎開先から、出征した飼い主を探して
黒猫ロード・ゴートの長い旅は始まります。
行く先々で様々な出会いがあり、
新たな飼い主たちとの束の間のふれあい、
別れを重ねて旅を続けるのですが、
緊迫した情勢の中で、
それぞれの人々の心と生活に希望と救いを灯し、
確かな足跡を残していきます。
児童文学の定石というか、
結局は、邦題タイトルのとおり、
飼い主の元に、やがて戻る猫の物語なのですが
淡々と描かれるがゆえに、リアルで
長い深い道中での出会いと別れのひとつひとつが、
とても心に強く響く傑作だと思います。

- 作者: ロバートウェストール,Robert Westall,坂崎麻子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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ところで、この原題は “Blitzcat” で、
`blitz’には「ロンドン空襲」や「電撃」等の意味合いがある。
作者のロバート・ウェスト―ル(Robert Westall 1929ー1993)は
イギリスの戦争文学の第一人者といわれ、『海辺の王国』など
他にも心に残る作品をいろいろ書いています。

- 作者: ロバートウェストール,Robert Westall,坂崎麻子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
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また、これまで、私は知らなかったのですが、
宮崎駿監督が、ウェストールの作品に惚れ込んで、故郷を訪ね、
そのオマージュ作品も載せて、編纂されたものもあります。

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの
- 作者: ロバート・アトキンソンウェストール,宮崎駿,Robert Westall,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/10/05
- メディア: 単行本
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猫と出会って救われる人々の姿にはほっとする、
その一方で、戦争というものが、いかに人間の心を蝕んでしまうか
といった、やり切れない哀切さが漂う。
先の物語の最後のくだりは
「夢の中で、ロード・ゴートはねずみを追っている。
どこの国のねずみでもかまわなかった。」
もとより、国とか人種とか、そんな違いは猫には関係ないことだが、
確かに、そうした違い以前に、私たちは、皆、同じ人間なのである。
そして、何より、自由で、安心して眠れて、
充分に食べることが出来、愛する人の傍らにいられること、
猫が望むものはシンプルだが、人間だってそれが基本なのだ。
児童書ということで、スルーするにはあまりにも惜しい、
大人にこそ、一読をお薦めしたい気がします。
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